序論
 

放射線治療機械の進歩
 

これまでの放射線治療は腫瘍細胞にダメージを与える事を優先してきました。
  そのための正常組織の犠牲もやむを得ないとして受け入れられてきました。
  たしかに照射の技術の急激な進歩に伴い、正常組織の犠牲の少ないものが現れました。
 

現実を知ればきっと驚かれることがあります
  今、社会で行われている医療の現場では、興味深いことに、医療でありながら、自動車のように、進歩の各段階の色々な照射機械と技術が共存して皆様の治療に使われています。
 
 癌医療の均てん化とはいいつつも、高度なものもそうでないものも実は混ざっているのです。
 
 せめて自分に適応される治療がなぜどのレベルの治療機械で行われるものなのか知っておいてもよいと思いませんか?
 
 汎用機を分類すれば 

技術的に単純な古いタイプから、
  対向
2門、
   3門~多門、
   3次元原体固定多門、
      IMRT(強度変調放射線治療)その改良機
   トモセラピー(
Tomotherapy
 などのようになります。
 
それらで照射されるビームの数は2, 3門~数門, IMRTになると1箇所からのビームもセグメントに分割されて130セグメント程度、トモセラピーではそれが700010000セグメント、で、数が多いほど精緻で細密な“彫刻”ができます。
  照射する部位を毎回セットする時の確認方法も、誤差の大きな体表マーキング、から、
X線透視による骨照合型IGRT、トモセラピーで使っているCTを使った内部照合型のIGRT、などがあります。それらの能力によって、脳転移に対してできる治療の精細さも変わってきます。

 

私が、いつも、心配していることを言います。
 それは、
 「患者さんが承知して選択しているのだろうか?」です。

 日本はフリーアクセスといって患者さんが、自分の望む診療を地域などの枠を超えて受けることができる優れた制度が保証されています。フリーアクセスは今、世界の流れです。

この原稿を書きながら、皆様が、フリーアクセスの権利を享受してよい治療を選択されるように祈ります。
 

本論

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「脳転移への放射線治療の選択」

 

 いま、目の前にある治療の選択肢は、理想的な治療なのでしょうか?

  あるいは現実的な選択肢の中で、本人にとってベストなのでしょうか? 

  このシリーズでは脳転移への放射線治療の選択をガイドします。

 

これまでの放射線治療は腫瘍細胞にダメージを与える事を優先してきました。そのための正常組織の犠牲もやむを得ないとして受け入れられてきました。本来、脳への照射の理想は、脳機能を守り、腫瘍を制御することでなければならない筈です。

 

 

脳への照射方法の話

この章は、脳転移への放射線治療を、選択していただけるようにお話します。第一部は、1.脳転移の予防のための放射線治療を、2.第二部は脳転位がすでにある脳転移巣の治療をお話しします。

 

第一部.予防のための照射。

 

予防的照射

当初からあきらかな病巣がなかった領域に対して放射線治療を行うことを予防的照射と呼びます。なお、一度病巣があって何かの治療後に今は肉眼的に見えなくなった部分への照射は、予防とは呼ばずに、後治療としての照射、アジュバント照射と呼んで区別しています。手術で、病巣を除去した後への照射もアジュバント照射の一つですが、わかりやすく術後照射と呼びます。予防的照射は多くの場合、全脳に行われます。

 

予防的全脳照射

脳にはまだ画像的にもなにも明らかな病巣がない状態だけれども、転移が発生してくる確率が高い場合があります。それらには、限局期小細胞肺癌の完全寛解後(肺の病変が完全にコントロールされた後)や、急性白血病の完全寛解後などがあります。それらは疫学的なエビデンスが証明されていて、標準治療として確立されています。一般的なガイドラインは、統計的に30℅以上の確率で脳転移が発生してくる場合で、転移の種まき元である原発病巣はよく制御されていて(complete response: CRの状態であること: 完全寛解)、予防照射で脳転移発生頻度を10%以下に低下させられる場合に、予防的全脳照射を有益な治療として勧めています。

 Q and A

Q:種まき元になる原発巣が残っている場合には有益ではないのですか?

A:原発巣が生き残っている場合には照射した後の脳に腫瘍細胞が漂着するかもしれないので予防的全脳照射のよい適応とは言い難いのです。原発巣が形として残っていても腫瘍マーカーや画像診断で腫瘍細胞がほぼ死滅したと判断される場合には、CR、準CRの状態であると判断して、予防的全脳照射のよい適応になります。

 

予防的全脳照射の一回線量と照射回数

総線量では、2Gy15回= 30Gy 3Gy10回の 30Gy がよく用いられます。副作用として、脱毛、脳機能障害等の副作用があります。

1.   脱毛は頭皮毛根に対する線量の多寡で決まります。

2.   脳機能障害等普通の予防的全脳照射で、海馬(近時記憶の中枢)の回避をしない場合は、30℅の方に早期に健忘などが発生することが知られています。また、小児の場合には就学・学習能力に影響が発生することが深刻な問題として議論されています。我々は次に述べる海馬回避前脳照射を提供しています。この海馬は脳の機能や構造を維持するための、脳の幹細胞の重要な供給基地の役割もあります。

 

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海馬について 

脳の中は寄せ木細工のように色々な部分に分解できます。海馬はタツノオトシゴのような形をしています。海馬という呼び名はタツノオトシゴを”海のお化け馬”(ἱππόκαμπος,  ἵππος= + κάμπος =海の怪物) というギリシア語に由来します(鼻が馬面です)。

海馬は歯状回とアンモン角からなり、大脳辺縁系に属します。辺縁系の一部とはいうものの、新しい情報の抽出、協調、固定は海馬で行われ、新しい記憶として形成されます。
 海馬と大脳皮質の役割を喩えると、海馬は仕分け・関連・意義付け、大脳皮質は倉庫です。
 海馬がうまく機能しなくなると、学習障害、近時記憶障害(昔のことは"倉庫"にあるので思い出せる)、方向や位置認識能力障害をきたします。認知症の方が場所がわからなくなるのは、この障害です。
 放射線や薬剤でも傷害が生じますが、ストレス、鬱病、アルツハイマー病で海馬が萎縮することが知られています。萎縮はMRIなどの画像で観察されることがあります(MRI画像でみると、海馬は神経細胞が詰まっている灰白質なので、白質との区別が容易なのです)。
 

このタツノオトシゴをぶつ切りにすると、右の海馬なら前から見て「の」の字を書いています。「の」とちょっと違うのは「の」の字を書き始める始点が”笠”を被っていてが、巻いた矢印のようです。笠の部分に細胞の密なところがあり、そこに神経幹細胞がいます。海馬の神経細胞の本体(核のある部分)は顆粒層(錐体層という)にあります。神経細胞に生長したものは樹状突起を張り巡らせています。

キャプチャ1

図 海馬-1 MRI画像でみる海馬の場所。Duke大学のサイトから。http://sites.duke.edu/dukeresearch/files/2012/11/hippocampus1.png
 

キャプチャ2

図 海馬-2

海馬は灰白質の塊であるためにMRI画像でわかりやすい。 写真はwikipedia enから

http://en.wikipedia.org/wiki/File:MRI_Location_Hippocampus_up..png

 
Q and A

  Q
 予防的全脳照射を薦めないような場合がありますか?

A あります。多いのは、抗がん剤治療によって、認知能力の低下や意欲低下を来した場合には、全脳照射は回復を妨げたり、さらに悪化させたりする可能性があります。抗がん剤による認知能力の低下は、通常代謝や細胞増殖の能力低下を伴います。血液データに現れた回復の状態などを参考に判断することもあります。これは、後で述べる、認知機能を温存する全脳照射の方法のところで詳しく述べます。



 

予防的全脳照射方法

脳転移 のない状態に対する照射を予防的照射といいます。予防的全脳照射は、限局期小細胞肺癌の完全寛解後(肺の病変が完全にコントロールされた後)や、急性白血病の完全寛解後などに用いられています。後者は小児が多いです。

 

1.       従来の予防的全脳照射方法(予防的全頭蓋照射prophylactic cranial irradiation: PCI)

全脳に照射します。正確には硬膜の内側の脳組織と脳脊髄液腔が照射される方法で、頭蓋骨への照射は必要ではありません。一回線量と照射回数、総線量では、2Gyx15回ー=30Gyや3Gx10回の30Gyがよく用いられます。この方法では海馬の回避をしません。そのために30%の方に早期に健忘などが発生することが知られています。また、小児の場合には就学・学習能力に影響が発生することが深刻な問題として議論されています。

キャプチャ5
1 全脳照射の方法 



キャプチャ3

2 トモセラピーでの全脳照射

脳脊髄液腔と脳組織が水色の領域になっています。骨と皮膚はブルー(2515Gy)か色無し(15Gy 以下)。ブルー以下であれば通常、毛髪は保たれます。

 

2.       海馬回避全脳照射 (Hippocampus sparing PCI : HS-PCI

海馬回避全脳照射は state of the art(最新の方法)です。
 
この方法は海馬の最大線量を 10Gy 以下に抑制する方法です。この方法によって認知障害の発生する頻度が30℅から7℅に低下したと報告されました。(RTOG 米国 の放射線腫瘍学グループ RTOG と地域臨床腫瘍学グループ CCOP の臨床試験結果、20139月米国放射線腫瘍学会総会)で報告されました。*
 我々はこの
海馬回避全脳照射を提供しています。
 海馬に転移する確率が調べられ、その確率が非常に低いことがわかっています。
*
 この照射方法の妥当性を保証した理由です。海馬の最大線量は
10Gy以下に抑制されます(北斗では8Gy以下)。線量は低ければ低いほど良いようです。
 *
http://www.rtog.org/News/tabid/72/articleType/ArticleView/articleId/73/Avoidance-of-the-Hippocampus-Is-Shown-to-Preserve-Memory.aspx

海馬トレースにおけるMRIの役割

 海馬の正確な抽出には、患者の構造個体差の大きい組織なので、放射線治療医のMRIの正確な読影能力と、放射線治療計画を立案するときに必要なXCT生データの画像にMRI画像を誤差なく融合(fusion)させる技術が必要です。これは時間の掛かる作業です。
 幸い、北斗病院の放射線治療医の宮本医長も、私も画像診断に長年親しんできています(私は診断の分野の論文も多いです)が、それでも、一枚一枚のピッチの小さな画像をチェックしていくには手間と時間がかかります。幹細胞ゾーンは海馬本体だけでなく側脳室の壁に沿って存在しますのでそれらのトレースを丁寧にすることで提供できる医療の質がよくなると信じているからです。

トモセラピーの卓越性

3A は、トモセラピーで計画した海馬回避全脳照射の線量の分布の図です。均一に海馬以外の脳と脳脊髄液腔が照射され、そして海馬は照射されていません。図4A は別の放射線治療/計画システムのひとつ(Elekta Infinity linear accelerator IMRT の方法で計画された海馬回避全脳照射の線量の分布図です。最先端とはいえ後者の計画では 35Gy 以上の過剰な部分(オレンジ>35Gy、赤>37.5Gy)が斑(まだら)に存在します。このような斑で過剰で線量分布は問題で不必要に正常な脳組織へのダメージが発生してしまいよくありません。


キャプチャ4
3A トモセラピーで計画した海馬回避全脳照射の線量分布図
キャプチャ7
3B トモセラピーで計画した海馬回避全脳照射の線量体積ヒストグラム

一番左の赤が海馬、10Gy 未満という指示を忠実に実現できています。このほかトモセラピーでは眼球、蝸牛、視神経などへの線量を制限できています。また次に示す他施設の IMRT のように 35Gy 以上の照射を受ける部分はありません。(ここでは脳の線量は海馬を含んで計算しています) 


キャプチャ8

4A Elekta Infinity linear accelerator IMRT の計画をした場合の線量分布図。
この論文の主旨は、海馬回避の治療が可能、という事です。でも、うまく分布しないでところどころ赤いホットスポットができています。赤いホットスポット必要のない障害を脳に及ぼす事になります。論文にサンプルとして載せる場合はサンプルにふさわしいきれいな例を出すのが普通です。同じIMRTが可能な機械といっても機械によって限界があるのかなと、思わせる図です。
4205-43746-1-PB
4B Elekta Infinity linear acceleratorIMRT の計画をした場合の線量体積ヒストグラム
 比較で出すのも気が引けますが、海馬は全然 10Gy 以内におさまっていない。脳と脳脊髄波腔は 35Gy 以上照射される部分がある。

(出典: Nevelsky A. etal, J Appl Clin Med Phys. 2013 May 6; 14(3): 4205. doi: 10.1120/jacmp.v14i3.4205.http://www.jacmp.org/index.php/jacmp/article/view/4205/2927

 

Q:脳転移以外でも海馬回避は有用でしょうか。

A:有用です。原発性脳腫瘍のひとつである悪性膠芽腫でも有用という報告が2014年にRadiation Oncology誌に発表されています。Ali AN1, et.al. Improved hippocampal dose with reduced margin radiotherapy for glioblastoma multiforme.Radiat Oncol. 2014 Jan 10;9:20. doi: 10.1186/1748-717X-9-20.




第2部.病巣治療のための照射。

 

脳への定位放射線治療stereotactic radiosurgery SRS/ stereotactic radiotherapy、 SRT

-A.脳の定位放射線治療

脳の定位放射線治療法は、脳の腫瘍部分だけをピンポイントで照射する方法です。転移性脳腫瘍(脳転移)、脳動静脈奇形、原発性脳腫瘍などの治療で用いられています。
定位照射では、頭蓋を固定して腫瘍のある位置を画像から計算して放射線で狙い撃ちし、正常脳をできるだけ温存します。定位照射の治療装置にはコバルト線源を用いるものにガンマナイフ、X線を用いたものやトモセラピーやエックスナイフなど多数があります。
X線を用いた定位照射の費用はパターンによらず一定です(1割負担では62,000円です。他に診察料などがかかります)。

トモセラピーの利点

·         通常のX線を用いた定位放射線治療は、基本となる IMRT 技術の中で使えるビーム門数に限界(一つの照射で1130門程度)があります。一回であれば 20Gy 程度、10回分割であれば一回 5Gy 程度がしばしば使われる線量で、中間もあります。トモセラピーでは1万本以上にまで細かく照射できるので精密で滑らかな線量の分布を得られます。

·         トモセラピーでは複数ある腫瘍を一度に精密で滑らかな線量の分布をもって照射できます。通常は1-数日で照射が終わります。外来、またはご希望で、入院での治療です。
ガンマナイフもエックスナイフも一度に狙えるのはひとつなので、複数ある腫瘍を一度に1つずつ狙って次々に治療することになります。

費用

保険を適用する場合は、仮に複数個の転移巣の場合、数コースにわけてそれぞれを治療しても保険診療範囲内であれば、定位放射の費用は1コース分のみの支払いです。数ケ月以上経過してまた別の病巣に必要担った場合には新たに設定される場合があります。保険を適用されない場合は非加入者の方(外国人などで)等の場合です。


問題点:ガンマナイフもエックスナイフも普通のSRSSRTでは全脳照射ができないので、既に脳に腫瘍細胞が散らばっていて、あとから出てくるかもしれない状態には全く対応できません。あとからあとから出てくる確率の非常に低い腫瘍はそうで良いかもしれませんが、はじめから多発している場合や、肺の腺癌の脳転移などでは、予防的な全脳照射も適応とされています。我々は、全脳照射付き定位放射線治療(SRT w PCI


キャプチャ10
5A
キャプチャ12

5B
キャプチャ13

5C

図5ABC
トモセラピーによる定位照射方法で、多発する脳転移巣を一度に全部照射する計画を立てた時の線量分布です。トモセラピーではこの方のように7つであってもこのように同時に照射できます。この計画では標的に 50Gy 照射し、眼球や水晶体や視神経、内耳などには制限レベル以上の照射されないように設計されています。
A
図のようにトモセラピーでは多発であっても全てを一度に照射できます。


分子標的薬を使っているうちに発生した脳転移にも放射線治療は適応があります(ただし、次も読んでください)

分子標的薬の多くは血液脳関門を通過しにくい性質があります。分子標的薬を使って長期間生存した場合に、単発あるいは多発の脳転移が出現することがしばしばあります。これは、今までになかった、新しい、脳転移の出現パターンです。分子標的薬で治療を受けている方は、リスクに応じて脳MRI を定期的に行っておく必要があるでしょう。

 

ケモブレインの心配のある場合に、脳に放射線治療をすればどのようなことが考えられますか?

ケモブレイン(chemo-brain)は、化学療法等で発生する認知障害を主体とした症候群の通称です。Avastinのような血管新生阻害作用のある薬剤を使っている場合には重篤な認知障害(cognitive disease)が特に出現しやすいことが知られています*1。 その原因としてAvastinが海馬のシナプスの形成能力を低下させる事が指摘されています*2。 

よって、まだ確実な臨床報告を見ませんが、悪性膠芽腫や大腸癌などで長い間Avastinを使っている方に対して海馬を含めた全脳照射を追加することは、認知症状を発生させやすくしているかもしれない事を考えて良いでしょう。

ハーセプチンもEGF機能阻害剤のひとつで血管新生阻害作用を持ちます。ハーセプチンもAvastinほど端的ではありません認知機能の障害などが社会的に問題となっています。

 *1 University of Texas M. D. Anderson Cancer Center. "Glioblastoma patients treated with bevacizumab experience reduced cognitive function and quality of life, study suggests." ScienceDaily. ScienceDaily, 1 June 2013. <www.sciencedaily.com/releases/2013/06/130601133647.htm>.

*2 Ashraf Pakzad, Nina Obad, Heidi Espedal, Daniel Stieber, Olivier Keunen, Per Ø. Sakariassen, Simone P. Niclou , and Rolf Bjerkvig Bevacizumab treatment for human glioblastoma. Can it induce cognitive impairment? Neuro Oncol (2014) 16 (5): 754-756 doi:10.1093/neuonc/nou013



定位照射の限界と解決

トモセラピー以外のほとんどの定位照射方法は予防的全脳照射を同時にできません。ガンマナイフ、サイバーナイフ、エックスナイフを含む普通の定位照射の方法では、メカニズム的に全脳照射を同時に計画したり、実施したりすることが困難です。
例えばまず定位照射で 50Gy 照射して、次に全脳照射 30Gy を重ねると、2つの計画の間でずれができたり、もとの腫瘍の周囲で線量が重なった部分が発生したりして大きな障害を起こしやすくなります。これは作戦としてまずいとしか言いようがありません。
脳転移が多発している場合、あるいは、多発しやすいタイプの場合には、定位照射方法に合わせて、予防的な照射を予め計画的に施しておきたい場合がしばしばあります。我々は、トモセラピーを用いた全脳照射付き定位放射線治療(SRT PCI)を提供しています。次にご紹介します。


-B.定位/全脳一体照射の組み合わせ計画

トモセラピーによる定位/全脳一体照射では一度に全脳照射と定位放射線治療を一体として計画した照射を行います。複数ある腫瘍を一度に精密で滑らかな線量の分布をもって照射できる点はトモセラピーによる定位照射と変わらず。費用は普通の定位照射と変わりません。多くの場合は PCI の期間(10回)で照射が終了します。入院は特に必要ではありません。遠方の方や虚弱の方には適宜回数の変更や入院に応じています。

腫瘍制御力の高いコースとして、10日間で局所へ 50Gy 全脳へ 30Gy をご提案しています。(図6AB)これは一回 2Gy の線量に換算した場合、α/β2, 3, 10 で、局所87.5, 80, 62,5 Gy 相当および全脳37.5, 36, 32.5 Gy 相当に換算されます。他のパターンのご要望に柔軟に対応していきます。

 

全脳照射付き定位放射線治療(SRT with PCI

●トモセラピー一度に全脳照射と定位放射線治療を行います。複数ある腫瘍を一度に精密で滑らかな線量の分布をもって照射できます。費用は普通のSRTと変わりません。多くの場合はPCIの期間(10回)で照射が終了します。入院は必要ではありませんが、遠方の方などでは、適宜応じています。

10 で局所へ50Gy 全脳へ30Gyで。

これは一回2Gy 量に換算した場合、α/β=2, 3, 10 で、 局所87.5, 80, 62,5 Gy よび 全脳37.5, 36, 32.5 Gy に換算されます。
キャプチャ14

6A


キャプチャ15
6B

6AB。トモセラピーによる定位照射+全脳照射の線量分布図と線量体積ヒストグラム。
トモセラピーで定位照射 50Gy 照射と全脳照射 30Gy を最初から組み合わせた定位/全脳一体照射の計画では、別々に照射したときのように2つの計画の間でずれができたり、もとの腫瘍の周囲で線量が重なった部分で不要に高い線量領域が発生したりすることがありません。この定位/ 全脳一体照射では眼球などのリスク臓器に不都合な影響はありません。

Q and A

Q 定位放射線治療のあとで全脳照射をするプランを立ててもおなじですか?(SRT 後のPCI
A  
SRT 後のPCI をすると定位放射線治療の時に入った腫瘍周囲の線量の影響は、全脳照射の線量に重なり、照射による脳のダメージが、より強くなるでしょう。最初からSRT 後にPCI を計画するぐらいよく計画された定位/全脳一体照射(SRT with PCI)を行うべきです。定位放射線治療のあとで全脳照射の費用は別途になるでしょうから、RT 後のPCI は脳のダメージが高リスクになり、しかも高費用で、"SRT後のPCI"は良いところがない組み合わせです。


Q and A
Q 脳転移が多発なので治療的な全脳照射一回
2Gyで合計40Gy をすすめられました。
40Gy 程度の線量では多くの場合(よほど放射線感受性の高い腫瘍以外は)転移巣における局所制御的な効果が限られています。定位/全脳一体照射のほうがよいかどうか点検してみるべきでしょう。

Q and A
Q 定位
/全脳一体照射に個数の限界はありますか?
A: 定位/全脳一体照射はメリットの大きな優れた用法ですが、転移個数やその分布があまりに多数で均一に濃密に分布しているようであればメリットが低い場合もあります。多数といってもいくつかのグループにまとまっていれば上手い方法がある場合がありますので個々に相談してくだされば幸いです。

Q and A
Q  全脳照射を受けたあと定位を受けられますか?
A   可能です。ただし"定位/ 全脳一体"法に比べると、有効性/安全性の効率が劣ります。定位で追加できる線量に限界があるかもしれません。全脳照射の後にもかかわらず転移巣が生じてしまったような場合は個々の場所等に応じた治療方法を提案しています。将来的には粒子線治療がよい方法だと考えています。(現在はまだトリミング技術に限界がありますし、また、粒子線で得られるべきまだ理想的な線量分布に比べて散乱が多いように思います。) 


海馬回避全脳照射付き定位放射線治療(SRT with HS-PCI

トモセラピーの能力をフルに使った、定位+全脳+海馬回避を一度に行うという新しいオプションです。ご希望の方に用意しています。ご相談ください。精密な照射をおこないます。

腫瘍制御力の高いコースでは、10日間で局所へ 50Gy +全脳へ 30Gy、海馬 10Gy 以下になります。肉眼的腫瘍部分には一回 2Gy の線量に換算した場合、α/β = 2, 3, 10 で、局所87.5, 80, 62,5 Gy 相当および全脳37.5, 36, 32.5 Gy 相当の線量が入ることは定位照射とかわりませんが、全脳照射を加えた上で、なお海馬が温存されます。

キャプチャ16
7A
キャプチャ17
7B

7 AB。トモセラピーによる海馬回避定位全脳一体照射の線量分布図と線量体積ヒストグラム。(ヒストグラムは体積cc 表示)10Gy 以下の赤線が海馬、30Gy の青線が全脳、50Gy の下段の赤線が標的

 

Why and how to spare the hippocampus during brain radiotherapy: the developing role of hippocampal avoidance in cranial radiotherapy Tomas Kazda Radiation Oncology 2014, 9:139  doi:10.1186/1748-717X-9-139

http://www.ro-journal.com/content/9/1/139/abstract 



 

10 で局所へ50Gy 全脳へ30Gy、海馬10Gy以下になります。

一回2Gy 量に換算した場合、α/β=2, 3, 10 で、 局所87.5, 80, 62,5 Gy よび 全脳37.5, 36, 32.5 Gy に換算されます。

腫瘍と海馬の位置関係により、長い時間がかかるoption(>20分)を提示しなければならないような場合には所要時間から計算した自由診療となることがあります。

本治療に関するお問い合わせ

お電話をご利用ください。

電話

北斗コールセンター

0155-48-8000

(月曜日から金曜日 午前9時から午後5時まで)

 

参照サイト: 

1.脳転移の治療方針 (日本語 )岸 和史 
http://www.hokuto7.or.jp/patient/kamoku/housya/nouteni.php

2.脑转移的治方案 (中文)岸 和史

http://www.hokuto7.or.jp/chinese/c-treat/c-medical-2.php