社会医療法人北斗 北斗病院2013年10月号掲載
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新放射線治療でより合併症のリスクを回避
北斗病院(鎌田一理事長)ではがんに対し、放射線をピンポイントで照射できる最新鋭の放射線治療器「トモセラピー」を従前から実施しているが、今年4月、和歌山県立医科大学の准教授だった岸和史医師を北斗病院の放射線治療科部長に招聘、周辺の正常な臓器を隔離して合併症のリスクを回避する新治療を開始した。
▲岸和史
放射線治療科部長
ところで高い線量の放射線治療をおこなうことは必ず周辺の臓器を破壊することになる。そのため従来の放射線治療は腫瘍に密接した他の組織や腫瘍を取り囲んでいる周辺臓器を隔離しないまま、放射線を照射することで、放射線障害による出血などの合併症を招くリスクがあった。それは避けるため、重粒子線治療をおこなう施設では開腹手術で悪性腫瘍と他の組織を隔離させて放射線を照射する術中照射をおこなわれている。しかし、それではかなりの侵襲(身体の負担)を伴い、また保険外なので経済的負担も大きい。
スペーサーによる新治療は腫瘍がある臓器と他の臓器との隙間にスペーサー(ゲルやバルーン)を注入、隙間が広がったところで、腫瘍に放射線を当てる。例えば、前立腺がんの場合、前立腺と直腸との間にゲルが入ることで正常な直腸に放射線が当たることを回避できるのだ。ゲルなどを注入するためのニードルは太さが21ゲージ(0.8ミリ)。治療時間は複雑な場合や後述するバルーンの場合を除いて10分程度。
しかし、この治療には的確な診断と解剖学的な知識や組織発生学的な専門知識が必要になる。診断には最新鋭のMRIやCT、PETを使うが、「臓器によって隙間の広がり方が異なるため、解剖学的な位置づけが必要です。また隙間に腫瘍細胞が浸潤している場合もあり、その場合にはより特定の場所(たとえば組織内にある層の中)にゲルを注入しなければならない」(岸部長)
組織がページを重ねたような層構造になっている部位ならゲルが使え、消化管や粘膜、皮膚などあらゆる部位のがんに適用できるという。ただ、腫瘍が組織を強く圧迫、しかも癒着している場合には流動性のゲルでは隔離できず、その場合にはゲルを併用したバルーン(風船)による治療をおこなう。「バルーンは固形なのでゲルより効果的だが、慎重にやらないと、出血や麻痺、血管閉塞を招く可能性がある」と岸部長。
北斗病院ではピンポイントで放射線を照射できる放射線治療器「トモセラピー」に、この治療法を組み合わせることで、より安全で適切な治療をおこなう方針だ。
鎌田理事長は「前立腺がんを中心としてこの新治療がスタートするが、全身の臓器にまで適用範囲を広げたい。放射線治療によるリスクを回避できる画期的な治療なので是非、推進していきたい」と期待する。
北海道のパワフルカンパニー(月刊クオリティー記事)から
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